Swimy について知るために

エンゲルバートの ABC モデルと NIC について

 ものを設計するとか、犯人を突き止めるとか、何でもよいのですが、我々が何か事を成そうと思う時にはそのための考えのフレームワークが定まっている必要があります。いろいろの迷いを取り払い、決め付けてしまうことをしないと行動は起こせません。例えばこの製品を作れば売れるのだ(実は本当かどうかは分からなくても)と断定する事がフレームワークであり、それによって製品つくりが始められるわけです。こんな製品を作って売れるかなーと迷っている段階では製品つくりに取り掛かれないというわけです。このことを抽象化して言うと、行動にはそれを支える「フレームワーク」が必要だということです。命令されたからやるのだというのも「命令されるからやる」というフレームワークの中で行動が行われるわけです。そのような行動をエンゲルバートは「A」と呼んでいて、我々が日常やっていることがこれにあたりますが、我々はそれに加えてそれをもう少しうまくできないかと考えながら行動します。前の例では、今作っている製品をもっと効率よく作れないか、というような事を考え改良する作業です。この作業のことをエンゲルバートは「B]と呼んでいます。我々はなんらかのフレームを固定することによりAやBの行動を行っているということです。
abc model

 これを逆さにみると、我々が通常行っていることは知らず知らずのうちに考えのフレームワークを持っているということになります。このフレームワークは上の議論で分かる通り、行動をするためにいろいろの迷いを切り捨ててしまって作られた、仮説に過ぎず、例えばその行動が社会的に付加価値を持っているかどうかという、行動の意味を保障するものではありません。あまり深く考えなくても技術が社会に役立っているのだと感じられる時代が終り、社会つくりをイメージしながら技術を応用せねばならなくなった今、今まであまり考えなくてよかった我々の行動のフレームワーク自体を意識的に考える必要があるとエンゲルバートは考えていて、そのような行動を「C]と呼んでいます。「C]は行動「A,B]のためのフレームワーク(あるいは行動に前提されている仮説)を考え直すための思考作業です。上の例で言えば、こんな製品をほんとに作っていてよいのか、とかこの命令に従って動いていてよいのか、とかを考え直す作業です。今やっていることの意味を見つけ出すためには、それを支えているフレームワークの外の世界がどうなっているのかを知らなければなりません。「C]とは今行っていることを取り巻く環境を全体像として捕らえる為の仮説をつくる作業ということになります。つまり「フレームワークを支えるフレームワーク」を作る作業です。

NICとは

 全体像を把握するために、人はいろいろなことをああでもないこうでもない、と頭のなかで試行錯誤をしながら仮設を作ってゆきます。その過程は、いろいろ違った意見を持った内なる他人が意見交換しながら仮説を作りだししているといえます。そうであればほんとに他の人を巻き込んで異なった意見を交換すればよりよい仮説がもっと早くできることになります。これは、新しい発見がブレーンストーム的な会話から出てくるという我々の経験から実感できることです。そして今のようにネットで自由に意見交換できる時代にはネット上のブレーンストームが有効であるということができます。それをやるコミュニティーをエンゲルバートはNIC(Networked Improvenment Community)と呼んでいます。ブレーンストームの参加者はその話題によって集まります。それが自分の会社をどうよくするかであれば社内の人間しか集まりませんし、地球環境をどうするかということであれば世界から人が集められるということで、それはブレーンストームのはたす目的によることとなります。いずれにしても何か今よりもよいフレームワークを作り出すことが目的で、エンゲルバートが「ネットワーク化されたコミュニティー」といわないで「ネットワーク化された改善コミュニティー」と呼ぶ理由はそこにあります。つまりフレームワーク(行動に前提されている仮説)をある目的に向かって作り変えよう、改善しよう、それをネットでやろう、というのがNICです。