Swimy について知るために

スイミーの由来と Swimy との関係

 『スイミー(ちいさな かしこい さかなの はなし)』はオランダの童話作家である故レオ・レオニがつくった童話の題名です。日本でも谷川俊太郎氏の訳で好学社から2003年時点で71刷目がでていたり、小学校の教科書にも使われていると聞くくらいとてもよく読まれている絵本です。およその話は;

 小さな赤い魚の仲間に、一匹だけ真っ黒だけれど泳ぎの早いスイミーという名の魚がいました。あるとき大きなマグロが急に襲ってきて、仲間が皆食べられてしまいました。逃げられたのはスイミーだけで、暗い海のそこを、一人さびしく、悲しく泳ぎました。けれど泳いでいるうちに、海にはすばらしいものがいっぱいあって、それをみるたびにだんだん元気になりました。そのとき、岩穴の中に自分と同じようなたくさんの赤い小さな魚の兄弟たちが、大きな魚に食われるのが恐ろしくて、閉じこもって、おびえながら住んでいるのを見つけました。スイミーは、考えて、考えて、考え抜いて、相談して、みんなが集まって大きな魚の形を作って、スイミーがその目になって、勇気をだして岩穴の外へ出る、という提案をし、そしてそのようにする、

 というものです。児童文学家の松居直氏によると(2003年1月8日NHK人間講座『絵本のよろこび』)、絵本の中ではスイミーは他の小さな魚と異なり、「目」をもっている魚として描かれていることがとても重要なメッセージとなっているそうです。そして、大きな魚の群れでは、スイミーは、「目」の役割を担うことなりますが、これは、スイミーがリーダーであるという意味ではなく、「目」の役目を分担していることがメッセージだそうです。そして、その生きるうえでの成長の証の一つが「小さな魚が協力して、大きな魚に対抗するという」ことで語られているということのようです。

 この童話の主題はスイミーが海の中を一人で冒険し様々な場面で、「世の中を見て自ら考え体験し」、成長して行くことで、それぞれが自らの「目」を養うことが、大きな問題に直面したときの解決能力に結びつくということようです。

 我々は今まで、科学技術万能の社会を創ってきました。それが人々に圧倒的に受け入れられたのは物を作ることによって、社会が豊かになると感じることが出来ていたからでした。しかしながらいまや物を作っているだけで自動的に社会が豊かになる時代は終わりました。これからは豊かな社会を創る事を考えながら物を作ったり科学技術を利用したりせねばならない時代へと社会の視点を転換する時代となりました。そのためには我々個人がその豊かな社会を作るための社会的な役割を、自分の意思で、自律的に分担出来るようになることが必要です。役割を自ら自発的に分担するということは、全体像が共有されていないとできません。一匹一匹の魚が命令されることなく全体を大きな魚として見せてゆくような行動ができるためには、それぞれが自分たちが作り出している大きな魚の姿を創造できて、他の魚がどう動くのか予測できることが必要で、その為には個々の魚は自分の外を見る「目」を養わなければなりません。それと同時に、沢山の魚で作った群れは、それ自体が生きてゆくためにその群れの外をみる目を持たねばなりません。ここには当然役割の分担が生じます。群れ全体をガイドする役割のスイミー、そのガイドにしたがって群れのポジションを守る個々の魚たち、その連携によって初めて社会の荒波をかいくぐって生きてゆく柔軟性を持ったコミュニティーが出来るのです。

 日本の社会が急激に活力を失っていると私達は感じているのですが、それを取りもどすためには、我々個人個人がまず科学技術万能の視点から脱却し、企業や産業の仕組みをかえて、新しい編成をもって対応することです。日本の情報産業に活力を取り戻すにはソフトウェアの会社が、たとえ小さくても自分たちの知恵を出し合って、大きなメーカーに頼らなくてすむように、また大きな企業はそのような新しい動きを促進するような世界を創らねばならないと思っていたときに、マウスやウィンドウやハイパーテキスト等の概念を考え出したエンゲルバート博士のセミナーで、一緒に来日した招待客のひとりが、「シリコンバレーはほらあの何とか言った小さな魚が集まる童話があったでしょう、あれあれシリコンバレーはああなってるんだ」というようなことを言われて、我々も初めてスイミーのことを知ったわけです。さてこの小さな魚達の作る大きな魚の形をどんなものにするのか、そのバーチャルな魚の構成員はどのようなコア・コンピタンスを持つ必要があるのか、そんな事をネット上の円卓会議で議論し、考えるのがswimyの目的です。大きな魚でも小さな魚にやさしい魚もいますし、小さい魚でも大きな魚と同じように振舞う魚もいます。小さいかどうかは物理的なサイズの話ではなく心の持ち方の問題であることはいうまでもありません。

 なお、絵本「スイミー(ちいさな かしこい さかなの はなし)」の英語タイトルは "swimmy" です。我々の "Swimy" の名前はこの物語に由来していますが、"Smart Web Interaction Model with You" の略なので "m" がひとつありません。どうぞご注意を。