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書籍名 『驕れる白人と戦うための日本近代史』 [amazon.co.jp で検索]
出版社名 株式会社文芸春秋
著者名 松原 久子著 田中 敏訳
[001] 2005/12/03 23:26:31 三田 守久
 すごい本ですね。

 なにがすごいっていって、まずタイトルですね。こういうタイトルは、戦後民主主義教育に馴らされたひとびとには聞くに堪えないものでしょうね。

 内容のほうも結構すごい。しかし著者がいちばんすごい。

 著者の松原久子氏は、この本をドイツ語で書いたそうな。すばらしい日本語が書ける(と訳者が言っています)のにドイツ語で書いた理由は、どうやらドイツ人になんとしてもわからせてやらねばならぬ、と思ったかららしい。日本語に訳すのは、面倒になったのか別のかたに訳していただいた、ということだそうです。

 訳者が、「訳者まえがき」で紹介していますが、著者の松原氏はドイツのテレビ局に出演して、日本軍の戦争時の行為をドイツのホロコーストと同一視することは理屈に合わない、と主張したところ、テレビ出演後の帰宅途中に、あるご婦人に平手打ちを食わされたそうです。つぎの出演のときにこのことを話したら多くのドイツ人からお見舞いの花束がたくさん届いたそうですが、そのなかにメッセージカードがついていて「あなたの言うことは腹立たしい。でも本当だから仕方ない」というものがあった、と紹介しています。

 全体としてたいへん面白い。日本の近代が総じて成功裡に展開できたのは(著者は必ずしも賛成しているようには思えない。むしろ西洋化に成功したのは、という意味のようです)、江戸時代の蓄積があったからであって、決して偶然ではない、という主張はもはやそれほどの新鮮味はないけれども、それでも「ほー」と思うようなこともあります。たとえば江戸時代はなにごとによらず徹底して「供給過剰社会」だと言っています。わたしも従来いわれているほどには江戸時代がひどい(貧乏なあるいは欠乏した)時代だったとは思っていませんが、それでも「供給過剰」とまでは思いませんでした。

 また日本のことではありませんが、以下のような話は信じられるでしょうか。

 「オリエントとヨーロッパの交易は慢性的な赤字だった。ヨーロッパ人は、ヨーロッパ以外の地域から購入したものは全て、金・銀で支払われなければならなかった。何トンもの金・銀がアラブ商人の懐に消えていった。
 しかしヨーロッパ上流階級の人々のオリエント商品への渇望は、貪欲で飽くことを知らなかった。需要の増大に反比例してヨーロッパの金・銀の貯蔵量は減少していった。そこで何世紀にもわたってアジアへの輸出のために特別な商品が用意されたのだった。その商品とは、ヨーロッパ人の奴隷である。」

 ヨーロッパには奴隷以外輸出できるものがなかったのだそうだ。ヨーロッパの国々の教科書にはほとんど書いていないそうだけれども、載っていても「さらわれた」と被害者のような書きかた、だそうです。

 なんやかやの話題を織り込みながら、結局、著者はヨーロッパが世界中に出て行ったのはすべて「物欲」のせいであって、博愛だとか善だとかいうのはもってのほかである。またヨーロッパがもっとも進んだ世界で、ヨーロッパ以外を導いているがごときの考えに浸っているのも幻想だ、と喝破する。事実、江戸時代の日本はヨーロッパ以上に成熟した社会であったと主張する。

 おおむねわたしも賛成します。

 最後のほうの中国や韓国に関する記述はもうすこし勉強してもらいたい気はしますが、、、。

 しかし「頭に一撃・ガツン」という本でした。

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