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書籍名 波乱の時代(上) −わが半正とFRB− [amazon.co.jp で検索]
出版社名 日本経済新聞社
著者名 アラン・グリーンスパン
[001] 2008/03/14 16:24:35 山田博英
FRBという組織は簡単に言うと公定歩合を上げ下げして国の経済を健全に保つ組織だが、それを行うために、自分の視点をもち、社会をモデル化して実証的に仮説検証を行い、それを政治に対して説得してゆく、それを忠実にやってゆくグリーン・スパンの日常の態度に敬意を覚える。私自身は1990年代のIT変革期に彼らがどのようにそれを観察していて、モデルにどう反映させていたのか、大変関心を持ちながら読んだのであるが、実によく、正しく観察し、政治に反映していると思う。そこに関連している彼の記述を長くなりますが、羅列しておきます;

1993年の夏には、・・・・アメリカ経済界ではリエンジニアリングと呼ばれる手法が大流行した。ルイス・ガースナーがIBMの経営再建に乗り出したp222。

「生産性について期待を持ちすぎている」と、サマーズ(註:クリントン政権の財務長官)が大統領のハイテク熱を評したことがある。私は賛成しなかった。われわれはインターネットの可能性について議論し、ルービン(註:クリントン政権の財務次官)はそのすべてを理解した。p233

私はこの朝食会(註:1995年より4年半にわたってルービン、サマーズ、グリーンスパンが週一度情報交換していた)たびに、新たな知識を獲得した。いわゆるニュー・エコノミーの謎について議論するには、考えられる限りの最高の場であった。情報技術とグローバル化という二つの力が経済に影響を与えるようになってきて、クリントン大統領が後に語ったように、「ルールブックが時代遅れになった」のである。p234

インターネット企業化が巨万の富を築いているのは、経済の進歩の副産物として避けがたいものだと大統領はみていた。「経済の新たなパラダイムに移行するときにはいつも、貧富の格差が拡大する。農業から工業に移行したときには、格差がはるかに拡大した。産業革命に資金を提供した人、鉄道を建設した人は巨万の富を築いた」という。いまはデジタル時代への移行期だから、インターネット企業化が大金持ちになっている。P236

1995年8月9日(註:ネットスケープの上場日)は、インターネット株ブームがはじまった日として歴史に記録されることになろう。・・・アメリカ政府が設計し、それまでは科学者・技術者がオンラインの遊び場として利用するだけだったインターネットが、世界のデジタル街道に変身することになった。P238

「私は1940年代後半から景気サイクルをみてきたが、今回のようなことは一度もなかった」現在の技術革新は深さと持続性の点で、「50年か100年に一度のもののように思える」。 これが世界的な動きである可能性を指摘するために、私は新しい現象が起こっているのではないかとほのめかした。インフレが世界全体で沈静化しているように思えるのだ。以上の指摘でいいたかった点は、金融政策の策定にあたってこれまでの知識が役立たなくなっている可能性があり、少なくとも当面、長年にわたって使われてきた経験則は適用できないかもしれないということである。P242

たしかに、インターネットの猛烈なスピードまで加速すると、創造的破壊を見逃すわけにはいかなくなる。シリコンバレーでは、企業がたえず事業を再編し、新規事業がつぎつぎに燃え上がっては燃え尽きていく。ハイテク企業の覇者であったAT&T,ヒューレット・パッカード、IBMといった大企業が、必死になって最新のトレンドを追いかけるしかなくなり、どの巨大企業も成功したわけではない。ビル・ゲイツは世界一の資産家だが、マイクロソフトの全従業員に緊急メモを送り、インタs−ネットの勃興はパソコンの出現に匹敵する動きだと指摘した。言うまでもなく、マイクロソフトが大成功を収めたのは、パソコン出現の流れにうまく乗ったからである。「インターネットの津波」と題したこの緊急メモで、ゲイツは、インターネットという最新の大変動に注意すべきだと警告した。この波に乗れ、乗らなければ死に絶えることになると。P243

情報技術がこのように広範囲な産業を変える力を持っているのは何故なのだろうか。P244

1995年に、クリントン政権で、経済政策の中枢を担うスパーリング補佐官代理、ルービン財務長官、タイソン大統領経済諮問委員会委員長は、大統領がハイテク・ブームに過剰な期待をいだくようになったと心配した。そこで、サマーズ財務次官に現実を指摘するよう依頼した。・・・サマーズはハイテクが経済を変えるという主張に懐疑的だった。・・・・大統領執務室に何人もの経済専門家が集まった。まず。サマーズ次官が発言し、労働市場が逼迫すると景気の減速が必要になる理由を簡潔に説明した。その後に他の参加者が同様の意見を述べていった。大統領は静かに聴いていたが、やがて話をさえぎってこういった。
「それは間違いだ。経済はあらゆるところで成長している」。実際には、クリントン大統領は直感だけに頼っていたわけではない。いつもそうしてきたように、企業経営者や企業家の話を聞いているのだ。P248

当初は珍しかったインターネットや電子メールといった新技術が完全に定着し普及するまでにかかった時間は、極端に短かった。何か異例なことが起こったのであり、その最中に何が起こっているのかをリアル・タイムで理解するのは、とんでもなくむずかしい課題であった。P248                        

1980年代には、日本の巨大な財閥が大きな脅威になっていると思えた。鉄鋼や工作機械でアメリカ企業を駆逐し、アメリカの自動車メーカーを防戦一方に追い込み、家電では完全に市場を制覇したため、ニュースを見るテレビはみなソニーやパナソニック、日立などのブランドになっていた。ソ連がアメリカより早く人工衛星のスプートニクを打ち上げて以来、アメリカがこれほど外国に負けていると恐れたことはなかった。冷戦が終わったときすら、陰鬱な気分が晴れることはなかった。アメリカの巨大な軍事力が突然、意味を失ったと感じられるようになり、国際的な地位が経済力で決まるようになったからだ。
そして、情報技術のブームが起こり、すべてが変わったのだ。自由奔放で、企業家精神が旺盛で、失敗をものともしないアメリカの経営文化が、世界の美望の的になったのだ。・・・アメリカがそれまで20年、規制緩和やダウンサイジング、貿易障壁の削減など、時には苦悩に満ちた手段をとって経済改革に取り組んできた努力が、ようやく実を結ぶようになったのだ。ヨーロッパと日本が経済で沈滞する一方、アメリカでは経済が勢いよく成長するようになった。p266

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