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書籍名 『クラウド化する世界』(ビジネスモデル構築の大転換) [amazon.co.jp で検索]
出版社名 翔泳社
著者名 ニコラス・G・カー 著 / 村上 彩 訳
[001] 2009/01/18 20:54:49 三田 守久

 著者は、(読んではいないのだが)『ITにお金を使うのは、もうおやめなさい』(ランダムハウス講談社)という著書があるような人物だそうで、この本も(ITの世界に対して)やや批判的な立場から書いたものなのであろうか、という漠然とした先入観をもちながらの読んでみた。

 「・・・ゲイツをはじめとする、PC時代を担った偉大なソフトウェアプログラマの時代は終わった。コンピューティングの未来を担うのは、新しいユーティリティ事業者たちなのだ。」(101ページ)

 なるほど、そういうことか。新しい時代の幕開けというわけだ。

 以下の主張には、謙虚に耳を傾ける必要がある。

 「バーロウやその他多くの識者の誤りは、ネットの分散化組織は必然的に社会と政治のコントロールに抵抗すると仮定したことにある。バーロウらは、技術的な特性を個人的な自由のメタファーとしてしまったのだ。しかしギャロウェーが言うように、以前はつながれていなかったコンピュータを厳格なプロトコルによって支配されているネットワークにつなげることは、実際には『新たな支配装置』を作り上げてしまった。『ネットの設立原理は“支配”であって“自由”ではない。最初から支配は存在していたのである。』本質的に異なるワールドワイドウェブのページが、ワールドワイドコンピュータの一元的でプログラミング可能なデータベースに変化するにつれて、さらに強力な新しい種類の支配が可能になっている。プログラミングは結局、支配の手段以外の何者でもないのである。技術的には、インターネットがまだセンターを有していない場合であっても、いまやソフトウァエコードを通じてどこからでも支配を行使することができる。現実世界と比較して異なる点は、支配的行動を感知することはより難しく、支配する者を認識することもより難しいということである。」(237ページ)

 そしてまたつぎのような指摘はわれわれの希望的観測や楽観論を打ち砕く。

 「一般に行政府は、オンラインの世界を従来の地政学的境界線に沿って分割し始めている。そればかりでなく独裁主義的政権は、インターネットはその権力にとって、当初恐れたほどの大きな脅威を引き起こすものではないと悟り始めている。ネットは大衆に、情報を発見して、意見を表明するための新しい媒体を提供する一方で、官僚を監視し、反体制派を特定し、プロパガンダを広めるための強力な新しいツールを提供している。中国のような国では、ウェブ上では匿名で行動できるなどと思っていると、困ったことになるどころか身を危険にさらす羽目になる。胡錦濤国家主席2007年の演説で、インターネットは中国共産党の影響力を国民に及ぼすために大いに役立つだろうと強調した。胡主席は党幹部を前にして『ネットワーク文化の建設および管理を強化することは、プロパガンダとイデオロギー工作の戦線を拡大する助けとなるだろう。社会主義的精神の成長を促す波及力と感化力の買う大に役立つだろう』と述べた。
 同様に民主主義的権も、国内を監視する目的でウェブデータベースを捜索し、インターネットトラフィックを監視し始めている。2004年、米国議会の監視委員の調査によれば、米国の連邦機関199件のデータマイニングプログラムを実行または計画していた。・・・」(239〜240ページ)

 この本の書評は、紹介した文章でじゅうぶんだと思う。

 「クラウドコンピューティング」は、これまでいわれてきたインターネットやASP/SaaSあるいはweb2.0などがなすであろうと言われたパラダイムの転換より大きな転換を促すことになるだろうと思われるがしかし、右にも左にも、上にも下にも、善にも悪にも、長にも短にもなり得ることは念頭に置いておくべきであろうかと思う。


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