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書籍名 原発安全革命 [amazon.co.jp で検索]
出版社名 文春文庫2011.5
著者名 古川和男
[001] 2011/05/29 20:21:33 神谷英一郎
フクシマの後でも、我々は原発を手放すことができないのではないか。自然エネルギーが原発に代わるだけの電力を生み出せるようになるかどうか、現状では確信できるまでに至っていないようだ。そして、これから中国やインドの二十数億人がこれから快適な生活を手に入れようとしているのだ。だから、現状では我々は少しでも安全な原子炉を求めるしかないのだが、この本が提唱する熔融塩炉は、その答えになるのではないか。

現在の固体燃料炉がきわめて多くの問題を抱えた力ずくの技術であることを、フクシマで我々は学んだが、この熔融塩炉は原理的にまったく異なる技術である。しかも、1954年という早い時期に最初の出力実験に成功している実証済みの技術だというのだ。

このような有望な技術がなぜ葬り去られてしまったのかは不思議というほかない。軍事的な必要に応えないこと、メーカにとっておいしくないことなどが理由らしいが、短期間(10年程度)で実用化にこぎつけられるということなので、日本が先頭に立って是非開発してほしいものだ。

技術的な内容は基礎知識に欠ける私には多少難解だが、理解した範囲でその原理を以下にまとめておく。
1.天然の熔融塩の代表的存在はマグマである。これは珪酸塩を主成分とした熔融塩で、不純物を取り除いたものがガラスである。また、製鉄で使われるスラグも熔融塩であり、不純物を取り込む能力が高いことを利用している。原子炉で使うのはフッ化リチウムLiFとフッ化ベリリウムBeFの混合塩で、これは364℃という低い融点を持つ物質である。以下これを「フリーベ」と呼ぶ。
2.炉の本体はタンクに中性子減速材の黒鉛柱を並べただけの単純な構造である。炉と熱交換器の間をフリーベが循環する。炉から出たフリーベは中性子減速材がないので連鎖反応を起こさない。
3.核燃料はトリウムThを使う。トリウム(原子量232)は天然の元素としてはウラニウムUに次いで重いが、核分裂性の元素ではない。しかし中性子を1個取り込むと核分裂するU233になる。炉の中ではTh232が中性子を取り込んでU233になり、核分裂して熱を生む。
(天然のウラニウムは原子量238の核分裂しない同位体がほとんどで、原子量235の核分裂する同位体は0.7%)
4.炉の運転を開始するに当たっては火だねとなる中性子発生源が必要である。これは濃縮されたU235でも、著者が提案する専用の加速器増殖炉でTh232から製造したU233でもよい。臨界に達すればそれ以上の中性子発生源は不要となるので、あとは燃料の元となるTh232を燃焼した分だけ追加すればよい。
5.トリウムは資源としては量も比較的豊富で、しかも世界各地に存在する。
6.液体を利用するため、安全な炉を設計するのは難しくない。
7.トリウムを使用することのメリットの一つは爆弾の原料となるプルトニウムがほとんどできない点にある。また他の放射性の核分裂生成物も熔融塩中で安全な物質になるまでとどめておくことができる。
8.トリウムの代りにプルトニウムを燃焼させて、「核のゴミ」を消滅させることができる。(また、他の核分裂生成物を消滅させる手段も提案されている。)
[002] 2011/05/30 08:36:48 山田博英
こんなに具体的な良さそうな話があるのに、現時点でも一般議論の表層に出てこないその当事者、関係者のエネルギーの無さはどこから来るのでしょうか。まさか現時点でも政治的、業界文化的な圧力があるのでしょうか。

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