書評へのコメント追加

書籍名 原子力神話からの解放−日本を滅ぼす九つの呪縛 [amazon.co.jp で検索]
出版社名 講談社+α文庫
著者名 高木仁三郎
[001] 2012/06/30 22:44:22 青木衛
 本書は13年前の1999年9月30日に茨城県東海村のJCOウラン加工工場で発生した「臨界事故」に遭遇した核科学者の著者が「この事故は、原子力産業や政府はもちろんですが、原発反対派の私自身も含めて、根底から今までの原子力問題に対する態度の甘さを認識させられ、痛感させられる、そういう事故だった」として原発問題に決着をつけようとの強い思いで書いた本とのことである。11章からなり、著者はまず「原子力発電の本質と困難さ」に触れ、「原子力は無限のエネルギー源」、「原子力は石油危機を克服する」、「原子力の平和利用」、「原子力は安全」、「原子力は安い電力を提供する」、「原子力は地域振興に寄与する」、「原子力はクリーンなエネルギー」、「核燃料はリサイクルできる」、「日本の原子力技術は優秀」という9つの神話について丁寧に論駁し、最後に老朽化した原発を廃炉にする場合の問題点を指摘して終わっている。そのなかで著者はこう述べている。
 『政府の事故調は安全神話の崩壊と言いながら、その先がはっきりしないというか、リスク論に逃げていて、総体的にリスクが小さければそのくらいは我慢しなさいというようなことを言っているわけです。けれども原子力の事故の場合には、いったん事故が起これば非常に巨大な影響を及ぼすわけですから、事故対策をもっと深刻に考える必要があります。安全神話が崩壊したことの帰結として、このことが当然出てこなければなりません。つまり、原子力事故は必ず起こる、起こりうるんだということを前提にして、それでもその影響を緩和し、住民に対する影響も緩和し、被害を最小限にする、あるいは被害が生じたときに迅速な体制がとれるような一連の体制をとる、ということです。
 社会全体としても、原子力を選択することは事故の可能性まで含むということを十分わきまえる必要があると思います。事故対策のコストを払っても、なおかつ原子力を選択するかどうかということです。もちろん、そういう議論をきちんとしたうえでですが、現実的な選択をしていく、そういう原子力についての新たな覚悟が、今ないといけないのではないでしょうか。それが安全神話が崩壊したということの意味だということを、私は強調しておきたいと思います。』
 この文はあの3.11後に書かれたのではない。著者は2000年10月に亡くなっているが、更に「安全というと原発の内部だけに目が向けられ外側の安全は、それに比べたら百分の一程度にしか考慮されてこなかったが、JOCの今回の事故により、本当に安全な原子力がありうるとして、それをやろうとするならば、この原子炉の外側に膨大に広がる核燃料サイクル全体にわたって、今の原子炉と同じくらいのお金と努力を傾けて、安全規制の人間をへばりつかせて、チェックしていく必要がある。現状より人員を百倍に増やす体制にしなければ「『安全』から『安心』へ」などと、とても言えないのではないかというのが、私の現状における一つの結論であります。」とも指摘している。13年前のJOC事故の原因検証が十分におこなわれず従って反省もいかされず、先人のこの指摘も無視して事故を矮小化しその対策だけを大々的にとりあげ安全と宣言し、一旦崩れかかった安全神話を補強して原発を推進し続けてきた結果があの福島原発災害につながったのであると思う。その悲惨な体験をした今も著者が警告した13年前と状況がまったく変わっていないことに驚くと同時に悲しい。3.11から一年余りしか経過していない今また原子力神話を再構築して、同じ轍を踏もうとする政府・官僚システムに怒り覚える。日本で起きた事故に素早く反応し脱原発に方向転換したドイツ、イタリアの政治システムがうらやましい。


書評・コメントを追加してください。

発言者名
内容
ID
パスワード

書評・コメントの追加には入会時にお知らせした Swimy メンバー専用の共通 ID とパスワードが必要です。ID や パスワードが不明のときは事務局(contact@swimy.org)までお問い合わせください。